賀龍の滝 その1

秋。紅葉のいい季節を満喫すべく、斬、不運と俺は紅葉の一番綺麗なところに出かけた。北海道最大の瀑布、一大観光地の賀龍の滝へ。

賀龍の滝は積丹半島のさらに西、島牧町の南にある滝。滝もさることながら、周囲の景観も雄大で秋には綺麗な紅葉がみれるという話で、秋を満喫しようと機会を狙っていた俺はやるきまんまんで車を運転。それに答える不運、「いきたくねえ」「紅葉の季節は今じゃねえ」と、彼もかなりのやるき。よし、いつもどおりだ。

俺は一人でそんなに遠くにドライブに行くと寂しくて死んでしまうので、やる気にむらのあるメンバーを強引にまとめて一路島牧をめざす。国道5号線を順調に走り、ねっぷ駅のあたりから日本海側に向けて線路沿いに右折、国道229号線に入る。という予定が、

斬:「ねえ、いつのまにか右に線路なくなってるよ」 俺:「ん?」

なにも気づかずに会話する俺。重ね重ね言うと、コースとしては線路沿いに右折。はっきりいうと、右折する場所を見逃している。

俺:「ま、まあ、次に豊幌あたりから右折すればリカヴァーできるよ。」 斬:「おお、そうだね。右に三叉路が見えるはずだから、そこから入れる。」

運転すること数分。三叉路はさっぱりみえず。

俺:「蕨岱って見えるけど、それってどこら辺」 斬:「あ。」

ちなみに、蕨岱は豊幌の三叉路のさらに向こう。またもや右折する場所を見逃す俺ら。←今後このようなことばかり続きます。

予定を2時間ほど遅らせながら、午後1時頃やっと島牧へ。ここから再び山側へと入り滝に向かうわけだが、ここでまた道を入り間違えるとアウツ。そんな状況で斬が言う。「おぃ、行きすぎた。」滝に向かう道は温泉を目印にして右に入る。見ると、確かに温泉らしき家が後方に見える。そうかと思って引き返す俺。見ると温泉の曲がり角の向こうはひどくマイナーそうな砂利道。賀龍の滝は一大観光地なのに。不運は子供の頃賀龍の滝行ったことあるのに。しかも俺はつい数年前に行ったことあるのに。

誰も間違ってることに気づきません

つまり結論から言うと、この道は間違ってます。この選択のせいで、風光明媚な秋の観光は一転して死のサバイバルに。

地図を見ると、くねくねした道が続いていることから砂利道のような道でいいだろうという判断のもと、俺ら三人を乗せた車はその変な砂利道を進む。しばらく進むとさすがにこの三人でも不安になったので、次に車とすれ違ったら話を聞こうということになった。で、さっそくすれ違った車は

ベンツ。黒塗りのヤツ。

この時点で俺らの判断は、「向こうから車が来るんだから正しい道だろう」「あの車に話しかけるのはやめよう」というもの。その判断自体はいいんだが、道をそのまま進むのはどうか。

怪しげな砂利道を進むこと30分。

俺:「路肩狭いなあ」 「路肩狭いなあ」

そんなことを言いながら進む俺らの車。路肩が狭いのは道が間違っている証拠なのではないかという疑問は少しも抱かないまま。そのうち、地図に絶対載ってない分岐点につく。地図上では次の曲がりは左だというのだが、道は右と直進の道。しかも、直進の道はあきらかに下へ下へと下っている。

「右なんじゃないか?」

誰が言ったか忘れたが、そんなことを誰となく言い出して右へ。このころ、道がおかしいのではないかと気づく。でも誰も引き返そうとは言わない。それは、いままで進んだ時間がもったいないから。つまり、最悪このまま進み始めても向こう側から出られるはずだと踏んだわけである。『レスキュー特番・死からの生還スペシャル』みたようなテレビ番組をよく見る人ならだいたい察すると思うが、こういう判断をする人間はまず間違いなく死にます。

さて、どんどん道を踏み外していく俺らの車。激しい砂利道のせいで車の底をがりんがりん削りながら進んでいく。さらに30分進んだ頃、俺の気力というか、理性というか、精神の何かが我慢できなくなる。

俺:「休憩しないか?」

ちょうどそこは高い橋の上。せっかくだからこのいい景色を見て休憩しようというのが休憩の理由。見たこともないような高い橋の上なので、思わず「俺は世界一高いところから立ちションするぜ」などとはしゃいでいた俺なのだが、本当のところはすべてのことから逃げ出したかったのです。

さらに30分進む。今まで川沿いに下っていたはずの道が登り始めるという泥沼のような事態。時刻を見ると15時30分。ついに

俺:「引き返そう・・」

全行程の引き返しを試みた俺ら。このまま進み続けるとあきらかに日没を迎える。そういえば小一時間前に

「路肩狭いなあ」

などと言っていたことからわかるとおり、日没を迎えると一時間前の道にさしかかった時点で最悪滑落。日の明るいうちに帰らないと、滝を見に行ったのに三途の川を見に行くはめに。いや、そんな冗談を言っている状況じゃなくて。

長いので2に続く